ここまで7つのプロマネスキルを紹介してきました。
これらのスキルを使いこなせていれば、あなたのプロマネ力はすでに爆発的に上昇していると思います。笑
でも、今までのプロマネスキル、実は『平時』に活きるスキルです。
一方、プロジェクトは『有事』の連続…何も問題が起きないプロジェクトは皆無と言ってよいと思います。
そのため、この記事ではプロジェクトの『有事』を乗り切る『交渉力』について解説していきます。
個人的には新卒で入った総合商社でかなり鍛えられたスキルで、これがあったからこそ戦略コンサル・スタートアップでも何とかやってこれたと思っています!
『交渉は営業だけしか使わないもの』と思っているかもしれないですが、多くの利害関係者を調整しながらプロジェクトを推進しなければいけないプロマネほど、絶対に身につけるべきスキルです!ぜひ心して学んでみてください!
なぜ『有事』のプロマネ力が必要なのか?
まず最初に『必要性』を確認していきましょう。
皆さん、なぜプロマネも『交渉力』を身につけるべきだと思いますか?
答えはシンプルで、DXのような新しい取り組みをする場合、必ず『ブロッカー』になる人物が付きものだからです。
そのため、平時であれば『着実に、合理的に物事を進めるスキル』が重視されますが、ブロッカーが現れた『有事』の事態では、交渉力を使って社内外を『動かしていく』スキルが求められます。
プロマネにとっての交渉力とは?
前提を揃えるために、プロマネにとっての『交渉力』について少し掘り下げておきましょう。
まずは①交渉力を使うシーンですが、これには2つあります。
プロマネが使う場合、『仕切る』の方が圧倒的にやらなければいけない頻度も多く、重要度も高いです!
次に②交渉力を使う相手ですが、これにも2パターンあります。
気をつけたいのは、交渉相手は『合理的な部分』と『非合理的な部分』を併せ持っているという前提に立つことです。
どんな相手でも(社内外関係なく)、常に100%ロジカルに合理的な交渉をしているわけではないものです。
そして最後に③交渉が強い、の定義です。
交渉と聞くと『押しが強い』『声がでかい』タフネゴシエーターが強いと思われるかもしれませんが、ビジネスにおいてはもっと重要なことがあります!
上記の3つの前提に立って『交渉力』を鍛えていきましょう!
交渉スキルの根幹『BATNA』『ZOPA』
最初に交渉スキルの全体像を見ていきましょう。
ポイントは明確で、とにかく①準備をしっかりすることです!ここで8割、勝負が決まります!
事前準備で大事になるのが①BATNAと②ZOPAです。それぞれ解説していきます。
- BATNA
BATNAとはBest Alternative to Negotiated Agreementの頭文字をとったもので、簡単に言うと、交渉決裂時に自分が採りうる『次善の選択肢』のことです。
これがなぜ大事かというと、交渉で相手から出てきた提案を受ける/受けないの『判断基準』になるからです。
良いBATNAを持っているほど、その交渉が決裂しても問題ないと判断できるため、交渉力が強くなります。
具体例を使って解説していきましょう!
以下の場合、あなたはどうすると良さそうでしょうか?ぜひ手を止めて考えてみてください。
BATNAが7万円と11万円のケースで、採るべき行動は変わりますよね。より良いBATNAを持つことで交渉は有利に進められます!
そのため、交渉前にいかに『準備』して、より良いBATNAを手に入れられるかが交渉成功のカギを握るのです。
- ZOPA
ZOPAとはZone of Possible Agreementの頭文字をとったもので、簡単に言うと、交渉が『妥結』する可能性がある範囲のことです。
先程紹介した『BATNA』ですが、当然ですが交渉相手にもあります。
そのためZOPAは『自分と相手のBATNAが重なる部分』になるため、交渉前の『準備』で相手のBATNAをいかに把握するかも交渉成功の重要なファクターとなります。
ZOPAも具体例を使って解説していきましょう!
以下の場合、あなたはどうすると良さそうでしょうか?こちらも、一度自分で考えてみてください。
この場合、売り手のあなたからすると1,900円で売る理由はないですよね。なのでスッパリと断りましょう!
逆の視点から見ると、もしAさんがあなたのBATNA(2,000円で買いたい人の存在)を知っていれば、2,100円で交渉をして、2,400円より300円も安く買えた可能性があります。
いかに交渉前の準備で『相手のBATNA』を掴み、『ZOPA』を把握することが大事かが分かると思います。
最後にBATNA・ZOPAから見える『交渉力の高め方』をまとめておきます。
上記で書いたとおり『交渉は準備が8割』です!交渉前にすべきことをやり切ってから交渉に臨みましょう!
交渉を有利に進めるための『アンカリング』
次にいざ交渉を開始した際の『冒頭』部分のポイント、『アンカリング』を説明します。
アンカリングとは『最初に提示された条件』がその後の判断に影響を与えることを指し、交渉で狙った通りの結果を得るために非常に重要なテクニックになります。
なぜアンカリングが大事かと言うと、最初に提示した条件より、以降の調整・譲歩を経て合意できる条件が良くなることはないからです!
但し、言いたい放題、こちらに有利な条件を言えばアンカリングが上手くいくわけではありません!
アンカリングで提示すべきなのは『説明できるギリギリの高い条件』です。
その上で交渉相手もアンカリングを使ってくる可能性を視野に入れて、最初に相手から提示される『高い条件』に引っ張られすぎないことも重要です!
交渉は出だしが肝心!交渉の主導権を握るためにも『アンカリング』を上手く活用していきましょう。
交渉において1番大事な『利害の調整』
ここから、お互いに条件を提示した後、合意に至るまでのスキルを解説していきます。
まずは『利害の調整』から見ていきましょう。
この利害の調整がうまくできるようになると、交渉は『自分の主張を通す→相手と自分の利害を調整する』に進化します。
勝ち負けだけのゼロサム・ゲームから脱却するためにも必ず身につけましょう!
ところで『利害』とは具体的に何のことでしょうか?
ここでは利害とは『立場の裏側にある本音』と定義します。
『休みたい』『休まないでほしい』という立場での議論ではなく、その裏側にある部長の『利害=クレームがこわい』を理解することで、A君は別の提案ができるはずです!
例えば、①自分は休むが常連さんに事前に連絡しておく、②顧客と仲が良い後輩に代わりをお願いしておく等で、自分の要求を下げずに相手の利害を叶えることはできます。
上手く利害を調整するためのポイントは以下です。
- 自分の『利害』を明確にして、相手にも伝える
- 相手の『利害』を推し量る(言ってもらえなくても仮説を立てる)
- 相手の『利害』を満たして、自分の『利害』を通せる方法を考える
これが交渉における『利害の調整』で、交渉相手も自分も良い条件が勝ち取れる=『ウィンウィン』が実現できる、めちゃくちゃ価値のあるスキルです。
交渉の最後の手段は絶妙な『譲歩』
最後に紹介する交渉スキルが『譲歩』です。
『利害の調整』を経てもどうしても合意に至らない場合に使うもので、『譲歩』の巧拙も交渉結果に大きく影響します!
譲歩するときの基本ルールは以下です。
とにかく自分の条件を下げるという超貴重なカードだからこそ、ベストな使い方をしないともったいない!
その上で戦略的に『譲歩』するためのポイントは3つです。
- 自分の絶対に譲れない『利害』を優先順位づけしておく
- 顧客の課題感やビジネスを理解し、顧客の『利害』の優先順位を把握しておく
- 1つずつの条件で戦わず『パッケージ』で交渉する
特に3つ目の『パッケージ交渉』は重要で、優先順位に基づいて自分にとって1番ラクな利害を超辛そうに『譲歩』することで、交渉相手から合意をうまく引き出しやすくなります。
『交渉力』を身につけるためにプロマネが読むべき2冊
本記事で詳細に『交渉力』について解説してきました。
営業など『売り買い』のタイミングでだけ使われると思われがちな『交渉スキル』ですが、実は多くの利害関係者をまとめ、プロジェクトを進めていくプロマネにとっても非常に重要なスキルです。
交渉力は難しいプロジェクトを成功させる大きな武器になりうるので、イケてるプロマネを目指す皆さんには、以下の2冊を追加で必ず読んでおくことをおすすめします!
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まとめ
今回はプロマネが体得すべき『交渉力』を詳細に解説しました。
プロマネをやっていると日々『交渉』をしているという実感はない方も多いと思いますが、本記事を通して『交渉力』はプロマネにとっても重要なスキルだと、感じていただけたのではないかと思います。
特にデジタル化・DX案件は新しい取り組みのため『ブロッカー』が出てきやすい…そのため『交渉力を使って周囲を動かしていく力』は非常に強く求められます。
この交渉力が身についたおかげで、難しいプロジェクトでも本当に進めやすくなったな感じていますので、ぜひデジタル化・DX案件を成功に導くプロマネになるためにも、体得を目指してほしいと思います!
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